慰謝料・財産分与について


〜慰謝料〜
慰籍料は、不法行為により生じた精神的損害を賠償する目的で支払われる金銭です。   
他方、財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた共同財産を清算分配するもので、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図る目的も有しています(民法768条参照)。   
したがって、慰籍料は離婚の責任がある者が負担するのに対し、財産分与は離婚の責任がどちらに存在するかに関係なく生じうるのです。このため、慰籍料なしで財産分与として500万円支払うということもありうるのです。   
このように考えると、慰籍料と財産分与は全く性格の異なるものということになります。しかし、実際には、慰籍料も含んだ意味で財産分与が行われることもあり、そのような場合には、別に慰籍料を請求することはできないとする裁判所の判断があります。慰籍料の金額は、離婚原因によっても異なります。協議離婚では、慰籍料なしということも多いのです。たとえ、夫婦の一方にのみ離婚原因があったとしても、暴力を振るったとか異性関係が原因でなく、性格やライフスタイルが原因の場合には、やはり慰籍料なしとする裁判例もみられます。 いずれにせよ、離婚原因のほか、生活状態や年齢、結婚期間等、種々の要因を総合して、裁判官が公平の観点から自由裁量によって定めるので、ケースによってかなり異なり、一概にいくら程度とはいいがたいのが実情です。こうした慰籍料は家屋の譲渡等の形で支払われることもありますが、通常は金銭で支払われ、分割払いの形をとることも多いようです。。協議離婚、調停離婚、裁判所の和解などによる離婚では、早く別れたいほうが相手を納得させるために「解決金」という名目で一時金を支払う場合が多いようです。


慰謝料は何を基準に決められるのか

離婚当事者の個々の事情によって決まりますが、算定の際に考慮される要因としては。

◎ 財産分与の額が大きければ一般的には慰謝料の額は低くなる。
◎ 精神的な苦痛の度合いが大きければ高くなる。
◎ 有責性の度合い。請求側にも有責性があれば減額される。
◎ 当事者の経済状態。資力が十分であれば高くなる。
◎ その他・・離婚に至る経過、婚姻期間、別居期間、当事者の年齢、性別、職業、社会的地位、結婚期間中の夫婦の協力の度合い、子どもの有無、結婚生活の実態、財産分与の額、親権、監護権の帰属、養育費の額、離婚後の扶養の必要性など。

暴行虐待に対する慰謝料

離婚の場合の慰謝料は、暴行行為やその他の夫婦生活全体をとらえて金額を算出しますので、暴行虐待などの離婚原因は、不貞行為に比較して定額といわれています。

慰謝料を請求するには

慰謝料を請求するには証拠をそろえておく必要があります。

◎ 暴力をふるわれてケガをしたときの診断書
◎ 暴力を受けた日時、場所、具体的な様子などをメモしておきます
◎ 愛人からの手紙
◎ 愛人と一緒の写真
◎ 自分が受けた精神的、肉体的な苦痛を記録した日記も証拠になります。
◎ 電話の通話明細
◎ 手帳のコピー(いつどこで誰と会っていたのか、不審な行動はないか)

慰謝料の請求は離婚前がよい

いったん離婚が成立した後には、相手方がなかなか慰謝料の話合いに応じず、応じたとしても額を低く値切られることがありますので、慰謝料を請求するのであれば、離婚が成立する前に請求するべきです。


慰謝料に税金はかかるのか

慰謝料は、損害賠償金またはそれに類するもので心身に加えられた損害などに起因して取得されるものとして所得税法では非課税とされています。但し、その金額が慰謝料として社会通念上妥当な金額を超えていれば、その超えた部分の金額は贈与とみなされて贈与税の対象となる場合もあります。慰謝料を支払う側も金銭で支払う場合は問題はありませんが、土地や建物を処分して慰謝料を支払う場合には支払う側に譲渡所得の税負担がかかることになります。

慰謝料の請求期間は

慰謝料の請求権は不法行為にもとづく損害賠償請求権ですからこの請求権は3年の短期消滅時効にかかります。したがって、離婚届から3年を経過したら慰謝料を請求できないことになります。


〜財産分与〜



婚姻中にお互いが築いた財産を清算することです。たとえ名義は一方の配偶者となっていても他方の協力があってのことであり、潜在的に夫婦共有財産と考えられます。妻が職業を持っていた場合も、持っていなかった場合も同様です。離婚原因がある側からも請求できます。財産分与とは、結婚中に形成した夫婦共同財産を清算して分けることです。夫婦は共同生活をしている間、協力して一定の財産を形成しますが、それは多くの場合、夫名義の財産とされます。しかし、夫名義の財産とされるものでも、その実質が妻の協力貢献によって形成維持されたものについては、離婚の際に、貢献の割合に応じて清算されるのが普通です。財産分与は当事者双方の一切の事情を考慮しますので、婚姻以前から所有する財産、あるいは相続により取得した財産であっても、財産分与をする上で夫の所有する財産は、支払能力ということで影響を与えることも否定できません。

なお、現実の財産分与の支払いは、慰謝料と合算する場合が多く、家庭裁判所の統計も合算して出しています。普通のサラリーマンで、財産分与と慰謝料を合わせて200万から500万円が典型です。

決まらない場合はどうすればよいか

夫婦の協議で決まらない場合には、家庭裁判所に「財産分与請求の調停申立」をします。それが不成立であれば、審判となります。

婚姻中の財産とは

結婚中の財産は、一般的に以下の3つに分類されています。財産分与の対象となる財産は、「共有財産」と「実質的共有財産」です。「特有財産」は財産分与の対象にはなりません。

1. 特有財産
結婚前から各自が所有していたもの。結婚中に一方が相続したり贈与をうけたもの。各自の装身具等社会通念上、各自の専用品と見られるもの。
2. 共有財産
夫婦の合意で共有とし、共有名義で取得した財産、共同生活に必要な家財・家具等。
3. 実質的共有財産
結婚中に夫婦が協力して取得した財産で、夫婦の一方の名義になっているもの。

※特有財産でも配偶者がその財産の増加に貢献しているような場合、分与の際にこの寄与度を考慮することになります。

財産分与の法律的な性質
財産分与というのは、婚姻中にお互いが築いた財産を清算することですが、法律的に財産分与が意味する範囲はたいへんに広く、法律的に認められている財産分与の性質は次のとおりです。

◎ 清算的財産分与(婚姻中の共有財産、実質的共有財産の清算)
財産分与の中心になります。
◎ 扶養的財産分与(離婚後の弱者に対する扶養)
離婚によって生活ができなくなる夫婦の一方の暮らしの維持。経済的に弱い立場にある配偶者が、自立をするまでの援助として支給されるものです。清算的財産分与も慰謝料も請求できない、あるいはできたとしてもそれだけでは生活できないときに、これを補うために請求できます。支払期限については3年程度といわれています。
◎ 慰謝料的財産分与(離婚による慰謝料)
最高裁判所は財産分与に離婚による慰謝料を含めることができるとしています。財産分与に慰謝料が含まれて、精神的な損害に対して十分に補てんがされている場合、配偶者の不貞行為などを理由として、別に慰謝料を請求することはできません。慰謝料的財産分与を含めて財産が分与されても、精神的苦痛に対して十分に補てんされたとはいえないと認められる場合には、別に慰謝料の請求ができます。
◎ 過去の婚姻費用の清算
多くは婚姻中に「婚姻費用分担請求」というかたちで処理されます。

扶養的財産分与

清算的財産分与の対象となる財産がない場合、扶養的財産分与の請求を検討します。この場合、自分の生活収入で生活できるようになるまで何年くらいかかるか、その間、生活費としていくらくらい必要かを離婚前の生活費を参考にして考えてみる必要があります。

扶養的財産分与が認められる基準としては、自立の援助のほかに、高齢である、病気である、子どもの監護のためなどがあります。子どもの監護で認められる場合は、子どもを引き取り監護することで本人の経済的自立が困難になるため扶養が必要であると判断されるからです。精神疾患などを負った配偶者への扶養的財産分与では、その配偶者が死亡するまでというかなり長い期間の支払いが命じられることもあります。
清算的財産分与ができなくても、扶養的財産分与では分与の義務を持つ配偶者に扶養能力ががあるかどうかが問題となるため、その配偶者が持つ財産が対象となります。扶養の能力があることが必要ですので分与の義務があっても資産がない場合には、認められないこともあります。いつの時点を基準として財産を評価するか最高裁判所は、裁判上の離婚で財産を評価する時期は、審理を終えたときとしていますので、離婚の時点を基準とするということになります。長期間別居した後に離婚することになったため、別居を始めたときと離婚するときの財産額が変わってしまったような場合、どちらの時点で財産を評価するのでしょうか。

「清算的財産分与」では、その財産の評価時期は別居時までさかのぼり、別居当時の評価額が適用されます。別居後にそれぞれが取得した財産は分与の対象にはなりません。

「扶養的財産分与」の場合には、財産の評価時期は離婚の成立時とするのが妥当だとされています。

財産分与の割合

清算的財産分与の対象となる財産が決まると、次に清算の割合(寄与度)をどうするかが問題となります。大部分の判例は、夫婦がその財産の形成にどれだけ寄与したかによって割合をきめています。

◎ 共働き夫婦の場合
夫婦の収入の差が寄与度の差とはなりません。原則として二分の一とされる例が多いようです。実際に働いて得た収入に極端な差があるような場合、能力に著しい差がある場合、実働時間に極端な差がある場合には、具体的な寄与度に応じて割合が決まります。
◎ 夫婦で家業に従事する場合
家業の営業にどれだけ寄与しているか、具体的な寄与度に応じて割合が決まりますが、二分の一とされる例が多いようです。自営業で、事業の運営が夫の手腕であるなどの場合には、妻の寄与度は二分の一以下としたものもあります。
◎ 専業主婦の場合
実際の裁判例では、大部分が3割から5割の範囲内で、家事労働の財産形成への寄与度により判断されています。5割の寄与度を認めたものとしては、不動産等を購入したときに妻も現金を出していたり、妻の離婚後の生活に対して扶養的な要素を考慮したなど、特殊な要因を加味した場合です。

財産分与はいくら請求できるか

財産分与の額については、一定の考え方はありますが、婚姻期間が何年でいくらといったような一定の基準はありません。あくまでその家庭の事情にあったケースバイケースで決めるしかないのです。 しかし、一般的に言えば、婚姻期間が長くなれば、それだけ夫婦で築いた財産も多くなることから高額化します。基本は、当事者の話し合いによるわけですから、当事者が納得すれば、どんな評価をしても、どんな分け方をしてもいいのです。

財産分与の対象となる財産には何があるか

◎ 現金・預金
金額が明らかですから問題はないでしょう。
◎ 不動産(土地、建物)
不動産については、不動産鑑定士に頼んで鑑定してもらえば、正確な数字がでますが、鑑定に要する費用も馬鹿になりません。財産の評価については、定めはありませんの で客観的にみて合理的と思われる方法、たとえば路線価、公示価格、購入時の価格などを目安にするとよいでしょう。
◎ 動産(家財道具、車など)
評価をしておよその価格を出す方法もありますが、現物で分け合う方法が多いと思われます。
◎ ゴルフ会員権
高額であることから投資目的で購入されることも多いですが、購入に際して預貯金を出している場合は、夫名義でも対象資産となります。
◎ 生命保険金
離婚前に満期がきている生命保険金は、受取人がどちらでも夫婦の共有財産として対象になります。まだ、保険料支払い中の場合は、不確定要素の多いことから、共同財産にはできないというのが判例です。
◎ 職業上の資格
夫が婚姻中に、医師、弁護士、などの専門的な職業上の資格を妻の協力を得て取得した場合には、清算の対象となります。
◎ 営業用の財産
夫婦が共同して事業を行っている場合は、たとえ夫が事業主であっても、夫婦が協力をして築き上げたものであるから、財産分与の対象となります。
◎ 第三者名義、法人名義
商店や農業、漁業などでは、両親と一緒に夫婦も共同で家業に従事している家族共同経営が数多くあります。この様な場合は、通常は家族経営の代表者である父親の財産となっている場合がほとんどです。家族経営のケースについては 夫婦の寄与分を認定して、これを財産分与の対象とします。また、実態は個人経営なのに、税務対策上法人名義にしているケースもありますが、名義のいかんにかかわらず、清算の対象にした判例があります。
◎ 退職金、年金
退職金は夫婦の永年の協力による共有財産として、清算の対象となります。
しかし、離婚が夫の退職前、退職間近である場合、不確定要素があるので対象とするには問題であるという意見もありますし、妻の将来の生活不安を考慮して、清算の対象とした判例もあります。
同じように、年金や恩給についても、支給の確定している分については、清算の対象となります。離婚時に支給の確定していないものについては、不確定要素が多いものという理由で清算の対象としては認めないとするのが判例です。
◎ 婚姻費用
別居が長期に及んだ場合、その間の妻の生活費は婚姻費用の分担として夫に請求できます。過去に支払われなかった婚姻費用は、財産分与として請求できるとするのが判例です。(婚姻費用分担の項参照)
◎ 債務(借金)
自分のために個人的に借りた債務は、清算の対象にはなりませんが、共同生活していく上で生じた債務は、夫婦共同の債務として財産分与の対象となります。

夫名義の預金は財産分与の対象か

夫名義の預金が結婚前からのものである場合は、財産分与の対象にはなりません。しかし、結婚後の生活費をすべて妻が負担したので、夫の預金が減らずにすんだような場合は、その分は、2人で築いた財産と考えられるので財産分与の対象になります。結婚後、双方の収入をあわせて1つの家計として管理し、預金をどちらかの名義で行っていたような場合でも実質的には2人で築いた財産と考えられますので、財産分与の対象になります。
結婚しても双方にそれぞれ収入があり、生活費をそれぞれ負担して、後は自分で管理して預金していたような場合には、それぞれの預金はそれぞれの財産と考えることもできます。

しかし、結婚生活では、お互いに有形・無形に協力しあって財産をつくり上げることが考えられますので、財産分与に際しては名義人だけの預金かどうか区別がむずかしくなります。この様な場合には、双方名義の預金をあわせて、それを2人の共有財産と考えて財産分与の対象とすることになります。

入籍前の同棲期間中に貯めた財産は財産分与の対象か

財産分与の額および方法を決定する基準は、事実上の夫婦共同生活の有無という実質的基準になります。夫婦関係の実態のある限り、内縁関係であったとしても財産分与はみとめられることになるのです。財産分与の対象になるか否かは、その財産が事実上の夫婦共同生活でつくられたものかどうかで決まり入籍したかどうかは関係ありません。

「へそくり」は財産分与の対象か

「へそくり」は、夫婦共同生活のための預貯金と同じ性質ですので、財産分与の対象になります。しかし、夫の金遣いが荒く浪費しているのに対し、妻が生活を切り詰めて貯めたような場合には、妻の特有財産と認められる可能性もあります。

不倫をした相手には財産分与しなくてもよいのですか


財産分与とは、夫婦が協力して築きあげた財産を清算するということです。不貞行為によって夫婦関係が破綻した場合であっても、それまでの相手の寄与度に応じて、財産分与をしなければなりません。


財産分与に税金はかかるか

財産分与の額が、夫婦が協力して得た婚姻中の財産の額や社会的地位からして、夫婦共有財産の清算として相当な額であれば、贈与税は一切かかりません。

しかし、不動産を財産分与した場合、所得税法にいう資産の譲渡に当たるとして、譲渡所得税がかかる場合があります。いくら課税されるかは、一般の譲渡所得税の計算によります。

離婚の財産分与請求権の時効

財産分与を決めずに離婚するのは危険です。離婚後はなかなか交渉に応じてくれなかったり2年経つと請求できなくなったりします。また、財産分与が決まるまでに時間がたってしまうと、相手が勝手に処分したり、売却する恐れもあります。この場合、権利としては請求できても 実際問題として実現できなくなることがあります。
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