婚姻中の夫婦の財産と借金について

妻名義の借金について

民法には日常の家事について負担した債務について、夫婦の連帯責任を定めた規定(民法761条)があります。しかし、ここにいう「日常の家事」とは、夫婦の婚姻生活に通常必要とされる一切の事項をいい、日常の食料・衣服などの日用品の購入などがこれにあたります。イメージ的には、米・酒などをツケで配達してもらい、月末にまとめて支払う、というケースを考えてください。この場合、注文した(つまり、売買契約を締結した)のは妻でしょうが、実際には夫婦が飲み食いするために注文したものですから、夫が「いや、あれは妻が勝手にしたことだ」と言い訳するのは許されないことでしょう。そこで、日常家事債務については夫婦の連帯責任を認めたのです。
 しかし、夫婦の連帯責任が認められるのは、あくまでも日常家事債務についてだけです。夫婦の一方が他方の所有する不動産を処分する、ということは、およそ「日常の家事に関して」したこととはいえないでしょう。また、生活費のためとはいえ借金をする場合も、借金そのものは何のために使うかハッキリしない点があるので、日常家事債務とはいえないのが普通でしょう。
 これは法律と常識とが乖離しているところでありますが、夫婦といえども民法上は単なる別の法人格です。これは、親子であってもそうです。したがって、妻(夫)や、親(子)がした行為については、その行為者だけが責任を負うのが原則であって、夫(妻)や子(親)は本来何らの責任も負いません。夫が多額の借金をしたからといって、妻が返済する義務はないのです。民法は、そのような個人責任の原則を当然の前提とした上で、民法761条に定める日常家事債務に関しては例外的に夫婦の連帯責任を認めているわけです。
 したがって、妻が仕事の上でサラ金から借りた金や、交遊費といったギャンブルのためにサラ金から借りた金は含まれません。サラ金業者は、妻が「生活費の足しにする」と言っていた、と言っていたとしても。 そのような場合は、やはり、夫がお金を返さなくてはならないのではと言う疑問ですが。サラ金からの借金が高金利であり、取立ても厳しいことからすれば、サラ金業者が夫にまで請求したいのであれば、夫を保証人にするなどすべきであったのであり、客観的にみて、「日常の家事」にはやはりあたらない、と考えられます。あなたには、妻が勝手に借りていたサラ金の借金を返済する義務はありません。  
 したがって、しつこく取立てをしてくる業者に対しては、請求をしないようにとの警告書を内容証明郵便で出しておけばよいでしょう。   
それでもなお取立ててくる業者に対しては、貸金業規制法違反で警察や検察庁に告訴できます。また、金融監督庁や都道府県といった監督行政庁に対して、営業停止・登録の取消しなどの行政処分を求める申立てができます。   
 知らない間に、妻が夫名義のクレジットカードを無断で使用して、数百万円もの借金を作ってしまった場合。カードの名義人である夫が返済しないと、と思いがちですが。
総額にもよりますが、妻が相当高額な買い物をしたことが推察されます。 カード会社の規約に、「会員の家族・同居人による不正利用に起因する損害については、全額会員の負担となる」といった規定があるのが通常ですので。カード会社もこの規定を盾に夫に支払を迫ってくると考えられます。しかし、夫が妻のカードを無断使用した事案において、このような規定があっても、カード会社の加盟店が、名義人本人や正当な権限者かどうかを直接確認できるのに、確認を怠ったために名義人に損害が発生したような場合には、カード会社側にも落ち度があるとして、裁判所が、請求金額の半分の金額の請求しか認めなかった事案もあります(札幌地裁平成7年8月30日判決)。   
この事案では、夫のしたサインが一般的には女性名と考えられるサインであったことから、加盟店は合理的な疑問をもちえたはずだとして、本人確認義務違反が認定されました。
したがって、単に暗証番号等のみで本人確認するような場合ではなく、上記の事案のような場合であれば、クレジット会社との交渉によっては、金額の半分程度は免れることも可能でしょう。もっとも、妻のカードの使途が、結婚生活に伴う日常的な家事に関するものであれば、日常家事債務として、あなたは全額について連帯責任を負うことになりますので(民法761条)、何に使ったのかを妻にきちっと明細をきくべきでしょう。

婚姻中の夫婦の財産について

夫婦といえども、夫のものは夫のもの、妻のものは妻のものであり、夫が妻の財産に何か権限を持っているわけではありません。 確かに、戦前は財産の管理権は夫にあったため、妻の個人財産も夫の管理下にありました。しかし、現在では、そのようなことはないのです。このことは、結婚前から有していた財産であろうと、結婚後に自分の名義で取得した財産であろうと、あてはまります(民法762条1項)。とはいえ、夫婦が暮らしていく上での生活費やその他の費用は、婚姻費用として、夫婦が互いの収入や財産等に応じて分担する必要があります(760条)。結婚前からの貯金や借金などは、夫婦どちらの財産であるかははっきりしています。 そして、結婚生活中においても、例えば、夫が小遣いで買ったCDなどは、夫の財産であることは明らかですし、婚姻前にカードローンなど組んだ場合もはっきりしています。民法には難しく書いてありますがイメージ的には ただ、結婚生活中には、家具や家電製品など、種々の生活用品が必要となってきます。これらは、一概にどちらのものか判断できないような場合も多いでしょう。そこで、民法は、こうした帰属のはっきりしない財産は、夫婦の共有と推定しています(民法762条2項)。
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