協議離婚をする場合には、夫婦で離婚を合意すればよく、離婚原因に制限はありません。
しかし、他方が離婚に反対して離婚の合意が成立せず、裁判離婚をする場合には、法律の定める離婚原因にあたることが必要です。
夫婦が離婚を決意するには、いろいろな原因があります。夫婦の協議で離婚する場合には、お互いに離婚を合意し、離婚届を出せば、それで離婚が成立します。したがって、離婚原因には制限がなく、お互いが離婚したいと思い、離婚の合意ができれば、離婚することができます。
これに対して、一方が離婚したいと思っても、他方がこれに反対し、合意できない場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをします。それでもうまくいかない場合は、最終的には、裁判で決着をつけるしかありませんが、裁判で離婚がみとめられるためには相手に離婚されてもしかたがないというような法律の定める理由(法定離婚原因)にあたることが必要です。協議離婚もダメ、そして相手が調停でも離婚を認めないとなると、離婚の裁判を起こして、「原告と被告を離婚する」という判決をとらないかぎり、永久に離婚はできないことになります。訴訟で離婚できるかどうかの判断は、法定離婚原因(事由)に当たるか否かによります。
以前は、夫婦の一方が責められるべき行為(有責行為)をした場合に離婚原因を認める傾向にありましたが、現在では、夫婦の一方が有責行為をしていない場合でも、夫婦が愛情を失い、結婚が破綻したとされる場合に離婚原因が認められる傾向になっています。
このことから、離婚が認められるためには、夫婦間で結婚が破綻したといえるかどうかが重要になってきます。
民法が、離婚原因として認めるのは以下の5つです(民法第770条1項)。
民法の定めている5つの法定離婚原因

1. 相手に不貞行為があった場合
2. 相手から悪意で遺棄された場合
3. 相手の生死が3年以上不明である場合
4. 相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
5. 婚姻の継続が困難な重大な事由がある場合

これらの離婚原因があることの他に、将来、戸籍上の婚姻を継続させても実質的な夫婦関係への修復は、まず不可能であろうという事情があることが必要です。(770条2項)
無責の配偶者から有責配偶者への離婚請求と双方無責
民法では、訴訟で離婚請求できるのは、離婚を請求する側に先に述べたような民法上の離婚原因がなく、相手にある場合(無責の配偶者から有責配偶者に対し離婚を求める場合)と、離婚請求する側にもほとんど離婚原因がなく、相手にもほとんど離婚原因がないが、夫婦としては破綻し修復の見込みがない場合(双方無責の場合)です。

有責配偶者から無責の配偶者への離婚請求

離婚請求する側が有責で、相手が無責の場合には、「客観的に破綻している」ことだけでなく「離婚により無責の配偶者が酷な生活状態に追いやられることがないための手当てをすること」などの制約がかなりきびしく付けられてやっと認められています。

最高裁は昭和62年9月2日、それまでの判例を変更し、愛人のいる夫が36年間別居生活をしながらも、妻に対して生活費を負担し続け、離婚に際して財産分与の提供を申し出て、離婚により妻は過酷な状況に追い込まれない、そして未成年の子どもがいないなどの要件があった場合に、有責の者からの離婚請求を認めました。
その後の判決は別居期間をどんどん短くして、およそ7〜8年間別居期間が続いていれば、その他の要件の充足をも当然検討しますが、ほぼ離婚を認めています。
別居の期間が相当続いている、相手配偶者が離婚により苛酷な状態に置かれている、心配がない(生活費や財産分与をそれなりに提供しているとか、あるいは相手配偶者も生活能力があるなど)、未成年の子がないなどの要件をみたせば、離婚を認められる可能性があるようになったのです。

婚姻の継続が困難な重大な事由」とはどんな場合か
夫婦関係が修復不可能なまでに破綻し、もはや夫婦として円満な関係を維持することが困難な状態になっていれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚原因になることが認められていますが、内容は幅広く、限定されていないといえます。
同じような事柄が、あるケースでは離婚原因となっても、他のケースでは離婚原因とならない場合があり、夫婦のいろいろな事情と合わせて総合的に決められます。

◎ 性格の不一致 ◎ 性生活の不一致
◎ 過度の宗教活動 ◎ 刑事事件で刑務所に服役
◎ 暴力・暴言・虐待 ◎ 配偶者の両親・親族との不和


「性格の不一致」が離婚原因になるか

夫婦関係が破綻していれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当します。性格の不一致が原因で客観的に見て婚姻が破綻し、将来的にも修復の可能性がないという場合のみ離婚の請求が認められます。

両親・親族との不仲は離婚原因になるか

両親・親族との不仲を改善する努力をせず、努力をしても関係が改善せず、そのために夫婦関係そのものが冷却してしまった場合には離婚原因となります。

過度の宗教活動は離婚原因になるか

宗教活動が節度を越え、家庭をないがしろにした結果、いさかいが絶えなくなり、日常生活にも支障をきたし、夫婦関係が破綻してしまった場合に、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるとして、裁判所は離婚を認めています。

浪費は離婚原因になるか

浪費により、夫婦共同生活が回復不可能なほどに破綻してしまった場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚が認められます。
しかし、これも程度の問題で、もっと夫婦で話し合い、夫婦が協力し合って努力すれば従前の夫婦生活を回復するのは不可能ではないとして、離婚を否定した判例があります。

性の不一致は離婚原因になるか

夫が性的不能である、夫が異常に性欲が強く妻が耐えられない、妻が潔癖症で性に対して嫌悪感を抱いている、性的嗜好が異常である、夫または妻が同性愛者である、などが離婚を認められた場合です。
性交渉の拒否が、即離婚につながるわけではありません。病気や高齢のため性交不能となった場合などは、離婚原因とはなりません。性交拒否や不能のために、愛情喪失し破綻に至った場合に離婚原因となります。


性交渉の拒否だけで離婚原因になるか

夫婦の一方が長期間にわたって性交渉を拒否し、その結果、愛情が失われ、結婚生活が破綻を来たしたというような場合でなければ、離婚原因とはならないと考えられています。

共働きで夫が家事や育児にかかわろうとしない場合に離婚できるか

夫婦間の協力義務違反により、回復の見込みがないほど破綻しているか否かによって判断されます。回復の見込みがないほど破綻しているとみとめられれば、「婚姻を継続しがたい重大な自由」にあたり離婚が認められることがあります。

夫がマザコン、妻が実家離れしないという理由で離婚できるか

配偶者よりも親との関係を重視し、配偶者と協力しあう関係をつくろうとしないということは、夫婦としての協力義務に違反する行為です。そらが普通の人なら絶えがたい程度のものであれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして離婚が認められることがあります。妻が実家離れしない場合も同様です。

不貞行為について

離婚原因では性格の不一致がいちばん多いように考えられていますが、離婚が裁判にまでなるケースではやはり夫の浮気、妻の浮気が圧倒的に大多数です。民法には浮気という言葉はなく、「不貞行為」という表現をとっています。

不貞行為とは

法律で言う不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこと」です。夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならない義務を負っています。この同居・協力・扶助義務の中には、夫、妻とも互いに貞操を守る義務が含まれています。この義務に反して一方が不貞行為を行ったという場合には、他方は配偶者の不貞行為を理由に離婚の請求をすることができます。裁判での不貞行為では、「婚姻関係を破綻させたかどうか」が焦点となります。

婚姻生活が破綻した後に性的関係が生じた場合

夫婦関係がすでに破綻したことと、その後の性的な関係との間には因果関係はなく、不貞にあるようにはみえても不貞にはなりません。破綻状態にある夫婦の一方が配偶者以外の者と性的関係をもった場合に、必ずしも不貞行為にはならないとした判例があります。
「浮気相手が夫と肉体関係を持つことが妻に対する不法行為となるのは、それが妻の婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に対する利益を侵害する行為ということができるからだ。したがって夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、原則として、妻にこのような権利または法的保護に値する利益があるとはいえないので不法行為にならない」(最判平成8.3.26)

別居後に性的関係が生じた場合

別居後(夫婦の関係が破綻した後)に生じた婚姻外関係は、破綻の原因ではありませんから不貞とはいえません。
同居中に婚姻外の関係が生じたような場合でも、すでに家庭内別居の状態であったことを客観的に証明できる場合には、破綻後の関係とされることもあります。

性関係を伴わない関係は不貞

肉体関係を伴わないプラトニックな関係やデートするだけの関係は不貞行為とはみなされません。肉体関係があることだけが離婚理由ではありません。肉体関係がなくてもそれが原因で夫婦仲が破綻すれば「婚姻を継続し難い重大な事由」になります。

生活苦やローン返済のための不貞行為

生活苦やローン返済のための不貞行為は生活の為の唯一の手段とは言えません。いくら生きていくためとはいえ、不貞には違いありません。ただ、不貞を理由とする夫からの離婚請求を地方裁判所は認めませんでしたが、最高裁は生活が苦しいからといって不貞をしていいとは言えないとして夫からの離婚を認めています。

夫が浮気したので私も浮気した

これはどちらの側からみても不貞行為があります。不貞を原因とする離婚の場合には、不貞をした側は有責配偶者として慰謝料を支払わなければなりません。この場合は、双方の有責性が比較考慮されて主たる有責配偶者を決めることになります。

1回限りの浮気は不貞

1回限りの浮気で離婚を認めた判例はありません。1度だけの不貞なら許されるということではありません。裁判での原因として認められる不貞行為とは、ある程度継続的で肉体関係を伴う男女関係を指すと考えられます。離婚原因としての「不貞」は、その為に「婚姻関係を破綻させたかどうか」が重視されます。家庭や配偶者を大切にする気持ちの方が大きく、十分反省しているといった場合には、「婚姻関係を破綻させた」とはみなされません。
1回限りの浮気をきっかけとして夫婦関係がうまくいかなくなったという場合には、「不貞」というよりは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかの問題として考えることになります。

浮気を一度許した時

不貞をいったん許したら離婚請求ができなくなる事はありません。いったん許したもののやはり夫婦の溝は埋まらず離婚の訴えを起こした時は、訴訟は成立します。

不貞行為があっても婚姻の継続を相当とする場合があるか

◎ 不貞によって婚姻関係が破綻したといえず、復元の可能性がある場合。
◎ 離婚請求する側に、より大きな婚姻破綻の責任がある場合。
◎ 離婚を認める事が夫婦双方の利益のために、または未成年の子の利益のために好ましくないとみられる場合。この様な事例は少ない。

不貞が原因の時は証拠が必要(不貞を証明するにはどうしたらよいか)

浮気が原因で裁判離婚したい時は、証拠をとっておくことが必要です。不貞の事実があることを証明しなければならないからです。証拠が不十分でも、離婚は認められることはありますが、慰謝料や財産分与も有利に進めたいというときには、はっきりした証拠があったほうが有利です。判例が認める不貞行為の意味は狭く、性交渉を持つことに限定しています。裁判の時だけでなく調停や協議離婚でも不貞の証拠をとっておくと、慰謝料請求の際に有利になります。不貞が認められるか否かは、証拠次第です。裁判で不貞があると認められるためには、ある程度はっきりとした証拠が必要です。浮気をしている場合には、愛人からの贈り物や、写真などを持っていることが多いのではないでしょうか。そのような証拠になるようなものを見つけたら、とりあえずコピーをしておきましょう。

 1.二人でホテルの一室に宿泊した証拠があるとき
 2.手紙などから性関係があることが読み取れる場合
 3.写真から二人で旅行したことがわかる場合

などの場合に不貞が認められています。肉体関係を示す証拠はないが、2人の交際状況からみて不信感を抱くのは無理もないということで、離婚を認めたケースがあります。
不貞の証明ができなくても、夫婦としての信頼が維持できないような貞節ではない行為があれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚が認められることがあります。

夫の側に不貞があるが妻にも破綻の原因がある場合

双方に「同じ程度に」責任のある場合には、離婚が認められます。不貞がある場合、他方の配偶者は、不貞のある側に責任があると主張しがちです。しかし、不貞もやむを得ないと誰もが考えるような行動が、不貞以前に、他方の配偶者にあるようなケースは少なくありません。夫に不貞行為がある場合でも、妻にも破綻についての責任があり、どちらが悪いともいえないような場合には、離婚が認められます。

強度の精神病で回復の見込みがなければ離婚できます。

夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならない義務をもっています。配偶者が強度の精神病にかかったような場合には、なおさら夫婦は互いに協力し、助け合わなければならない義務を負っています。精神病離婚が認められるためには、「強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと」が必要です。この要件を満たすかどうかについては、最終的には医師の診断を参考にして、裁判官が判断することになります。裁判官が判断する際、決め手になるのは、夫婦としての精神的なつながりがなくなり、正常な結婚生活の継続を期待できない程度の重い精神的障害かどうかということです。したがって、医学的に回復不能と判断された場合に限られるものではありません。精神病院に入院したからといって、すぐに離婚の請求をしても、まず認められません。裁判所はさらに、離婚後の療養、生活などについてある程度めどがついた場合でないと離婚を認めるべきでないとしています。
一般的に裁判所は、精神病のように看護を要し、しかも何ら責められることのできないものに対する精神病を理由にした離婚請求は、よほど相手についての看護などの先行きの生活の見通しがたつ場合を除いて認めない傾向にあります。

離婚原因として認められる精神病

◎ 早期性痴呆 ◎ 麻痺性痴呆 ◎ そううつ病
◎ 偏執病 ◎ 初老期精神病

離婚原因として認められる精神病に属さないもの

アルコール中毒、薬物中毒、劇物中毒、ヒステリー、ノイローゼなどは精神病には属さないとされています。

植物状態やアルツハイマー病、重度の身体障害、上記のような強度の精神病にあたらない疾病や心身の状態を法定離婚原因として訴訟を提起するには、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として扱われることもあります。

離婚が認められるための条件

◎ 治療が長期間に渡っている。
◎ 離婚を請求する配偶者が、これまで誠実に療養、生活の面倒を見てきた。
◎ 離婚後は誰が看病するのか、療養の費用は誰が出すのかなど、具体的な方策がある。

以上の要件を満たせば常に離婚ができるわけではなく、一切の事情を総合的に考慮してなお結婚を継続させるのが相当と判断される場合には、裁判所は離婚を認めません。以上の要件を満たさない場合でも、正常な結婚生活の継続を期待できないような事情が認められる場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」という別の離婚原因にあたるとして離婚できる場合もあります。

「強度の精神病」の強度とはどの程度

精神病が強度といえるかどうかは、精神病の程度が婚姻の本質である夫婦の相互協力義務を果たせない程度にまで達しているかどうかによって決められます。

▼判例
夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活などについて、できる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついたうえでなければ、、離婚の請求は許されない(最高裁判決昭33.7.25)
妻が精神病にかかり、回復の見込みがなく、また妻の実家が療養のための経済的能力があり、他方夫の生活が必ずしも裕福とはいえないなどの事情がある場合は、離婚請求が認められる(最高裁判決昭45.11.24)

アルツハイマー病

アルツハイマー病で痴呆状態となった妻に夫が離婚を請求したケースで、罹患している状態は「回復の見込みのない強度の精神病」に該当しないとしつつ、妻が長期間にわたり夫婦の協力義務を果たせず婚姻関係が破綻していることが明らかであるとして、結果的に離婚を認めました。(長野地判平2.9.17)

重度の身体障害

裁判所は、交通事故により身体障害となった夫が妻の愛情と家庭生活への復帰を求めていても「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして妻の離婚請求を認めました。(東高判昭和52.5.26)

誰を被告として訴訟を起こすのか

離婚訴訟の当事者が強度の精神病であれば、訴訟行為をすることはできません。この場合、誰を相手にして訴訟を起こせばいいのでしょうか。強度の精神病の者を相手に訴訟を起こすときには、まず禁治産宣告を受けさせ、後見人または後見監督人を選任してもらい、その者を被告として訴訟をなすべきであるとの判断を示しています。

離婚とは・・・法廷離婚原因が必要です!

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